桜吹雪に見送られ、10年ぶりの入学
2008年3月31日 月曜日

最後にした習い事というと、大学までさかのぼってしまう。
そんな私が何を思ったか、フランス語の学校に申し込んだ。
日本語と英語が話せるのは珍しくもないご時世なので、次はフランス語。新しいデジカメを買うより、習い事に興味を示すとは、自分もずいぶん変わったものだと思う。5万円で3ヶ月も楽しめるエンターテイメントと考えれば、安い安い。
飯田橋にある『日仏学院』は、フランス政府が運営する学校で、この冬からパリに引っ越してしまった友人が薦めてくれた。英語・イタリア語などヨーロッパ系の言語を話せる人向けの初心者コースというのがあったのが、最後の一押しになった。文法も単語もかなり似ているから早く前に進めるだろう。
3月末の本日、クライアントからのありがたいご入金を確認し、 汐留での打ち合わせが終わった足で、現金を握りしめて飯田橋に向かう。駅からの道のり、強い風に川沿いの桜が、狂ったように右に左に吹き荒れていた。
桜咲く道を、この10年間で初の学校に申し込みに向かう・・・ううむ、画がベタすぎだ。
日仏学院の建物には、日本とは微妙に違うコーヒーの香りが漂っていた。古い建物だけれども、カフェやら本屋やらがあって、どこか洒落た雰囲気を臭わせている。見渡すと、案内版から書類から何から全部フランス語で、申込書も、併記してあるフランス語は、何を意味するのかさっぱりわからない。一言で表すならば、それは「恐怖」。
申し込みを済ませ、併設の書店の木のドアをくぐる。教科書を買いに行くという行為が無性に甘酸っぱい気分だ。そのテキストブックのタイトルは「スピラル」で、綴りは英語のスパイラルと一字違いのSpirale。少しずつ上達するという意味だと思うが、やはり言語として似ている。なんとかなりそうな気がしてきた。
ともあれ、このとき感じたナミナミならぬ身の危険は良い兆候。どうせ勉強するなら、怖いくらい無知な分野でなきゃ意味がない。
阿部譲之 あべよしゆき。木工芸とプロダクトデザインを経て、NYで石岡瑛子に師事。東京を拠点に活動するデザイナー、ジャーナリスト