インタビュー取材の「テープ起こし」という作業
2008年7月13日 日曜日

今月末に発売の『デザインノート』誌・第20号で取材をさせて頂いた、佐藤可士和さんのインタビュー原稿。これを元に記事本文を書き上げた。
インタビューは、レコーダー1台だけだと録音がバグったときに取り返しがつかなくなるので2台同時録音。 テープの交換なしで延々と録音のできるICレコーダーを、現場到着直後から帰るときまで回しっぱなしにする。
電子式のレコーダーは何かの弾みでいっぺんに全データが消える可能性があるので、特に注意が必要だ。ライターを始めた頃には、MDレコーダーで録音した長いインタビューが、誤動作で全部消えてしまい唖然とした。その時は、インタビューに応じて下さった本人にもう一度話してくれとも言えず、記憶を総動員して記事を書くという離れ業をやった。以来、シビアなインタビューでは絶対2台。 同じ機械的な問題が起きないように、機種もわざと少し違うものにしてある。
インタビューを文章にする「テープ起こし」作業は、会話のスピードにもよるが、録音オリジナルの3〜4倍の時間がかかる。インタビューは長ければ使える話も増えるものの、後で書き起こす手間が増えるのでバランスが難しい。テレビの収録ではおさえで余分に録画することを「長まわし」と言うらしいが、ビデオも調子にのって無駄に長く撮影すると編集作業が悪夢になるらしい。
テープ起こしは別人に頼むこともできるが、書き起こしながら記事本文の構想を練ることができるので、ライター本人がやるのが理想的とも言える。だいたい予算の関係で外注は無理だが…。
上の原稿は、1時間半のインタビューを書き起こしたもの。
ご本人の言葉をカギ括弧で引用すると説得力ある部分や、ネタとしておもしろい部分に赤鉛筆で線をひっぱり、どの部分を記事に使うか決めていく。どんな記事・取材でもそうだが、実際に掲載されるのは取材した中のごく一部だけなので、ライターは全文を読めるという特権を持っている。
使えるテキスト素材を整理できたら、次は、記事に組み上げる作業が始まる。文章の論理的な流れと、文字数の調整、段組の切り替わる位置を考えながら少しづつ書き始める。この「知的パズル」遊びは、一番苦しくも楽しい時間である。
阿部譲之 あべよしゆき。木工芸とプロダクトデザインを経て、NYで石岡瑛子に師事。東京を拠点に活動するデザイナー、ジャーナリスト